科学技術社会論


現代社会において科学/技術の発展はめざましく、生活の隅々にまで浸透し、かつ社会およびその構成員一人一人の安全やリスクに直結する形ですすんでいる。環境、食糧、医療、災害、情報、など、さまざまな分野において、科学/技術と社会との接点の問題の調停が求められている。遺伝子組換え食品や狂牛病の危険のある牛の規制をどうするか、情報技術のグローバル化にともなう各国の法整備の問題、医療技術の発達にともなう倫理の問題など、自然科学の個別の学問領域を越えた複合領域の問題となりつつある。ところが、既成の学問は、個別の学問領域によって分割されすぎていて、このような問題群がまっすぐに扱えないでいた。気がかりではあるが、各専門領域のメインタスクからは少々ずれているために今まで体系的に扱われてこなかった領域、あるいは各分野の人々が個別に論じ、相互に枠組みを共有してこなかったがゆえにいまだ見通しの悪い領域、そこに科学技術社会論の研究領域がある。これまで文系と理系双方から等閑視されてきた、膨大な境界領域の問題を扱う学問分野である。科学者の社会的責任とは何だろうか。今後の科学技術のガバナンスはどうあるべきか。専門家と市民の科学コミュニケーションはどうあるべきか。さまざまな事例をもとに考えてみよう。将来の自らの研究成果の社会への影響に関心のある理系の学生、そして自然科学の個別の学問領域を越えて、外交や国際関係、法律そして社会制度の関係する複合領域の問題(科学技術のガバナンス)に関心のある文系の学生、双方に開かれている。

  1. 導入
    <事例編> (かっこ内は事例分析の際のメインコンセプト)
  2. 水俣病事例     (専門家と市民の認識のずれ)
  3. イタイイタイ病事例 (事例比較)
  4. もんじゅ裁判    (法との接点)
  5. 薬害エイズ事件   (国際比較)
  6. 遺伝子組換え食品のリスクガバナンス  (フレーミング)
  7. 最先端技術と法   (法との接点2)
    <理論編>
  8. 科学技術と民主主義
  9. 知識政治学
  10. 市民参加のしくみ
  11. 科学者の社会的責任
  12. 科学コミュニケーション